昨今、スマートフォンの普及に伴い、より身近になったインターネットですが、比例するようにトラブルが増加し、その内容も複雑化・多様化している現状があります。
インターネットトラブルが発生したあとの対処法も重要ですが、その前にトラブルを避けるための予防策として、利用者がインターネットの特性を理解することが大切です(リテラシーの向上)。
トラブルの原因の1つにモラルやマナーの欠如が挙げられます。
インターネットの世界では、人前では口にしないようなことでも、特定の友人・知人だけ話している感覚で気軽に書き込んでしまう傾向にあります。
トラブルの原因を生み出さないためにも、以下のようなインターネットの特性を十分に理解し、インターネット上に書き込みをする際は細心の注意を払うことを心がけましょう。
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日本のインターネット人口は1億人を超えているとも言われています。
現実の世界では1人に話しても噂が広まるまでには時間がかかる、もしくは広がらない可能性が大きいですが、インターネット上の書き込みでは1人に対して書いたつもりでも、一気に数十名、数百名の人の目に触れる可能性があります。
更にその書き込みを読んだ人が拡散すると、ネズミ講式に広がり、このような場合、誰にも止めることはできません。
昔から「人の不幸は蜜の味」と言いますが、悪い話ほど拡散力が強いので気を付けたいものです。
インターネット上の書き込みを完全に消去することは、難しいということを認識しましょう。
問題などが発生し爆発的に注目を浴びる状態、いわゆる「炎上」した書き込みについて、自分自身の書き込みを削除しても、インターネット上にはキャッシュと呼ばれる過去の情報が保存される仕組みがあり、また、炎上するような内容の書き込みは、興味本位で拡散を促すためにデータ(画面キャプチャ)を保存・公開する人もいます。
したがって、インターネット上に書き込んだ内容は、消すことができないものと認識して、慎重に書き込むようにしましょう。
匿名で書き込む掲示板などを利用していると、自分のことは誰にもわからないと勘違いして、中には逮捕されるケースや多額の賠償金を課せられるケースも発生しており、時折、ニュースになっているのをご覧になるかと思います。
インターネット上の書き込みは、決して匿名ではなく、正式な捜査ともなれば、特定することが可能となるので、書き込みを行う際は現実社会の発言同様、責任を持つよう心がけましょう。
上記対応を考えている場合、まず証拠保全を行ってください。
発信者が削除することもありますので、特に訴訟を考えている場合、事前に証拠を保存することが必須になります。
また、削除依頼を行うにしても、弁護士や警察に相談するにしても、ただ「自分の悪口が書いてあるので消してほしい(訴えたい)」と漠然とした内容では対応することができません。
証拠保全については、以下の項目について、データなどの保存(および印刷)を行えばよいでしょう。
書き込みの削除を希望する場合、書き込みがなされているサービスの管理者へ削除依頼を行います。大きく分けると以下の2つがあります。
ウェブサイト、ブログ、掲示板などの開設者
ブログサービス、レンタル掲示板などのサービス提供元(ASP)、インターネット接続プロバイダ(ISP)、ホスティング会社などのサーバ管理者
一般的には、まずサイト開設者へ連絡し、削除を依頼しますが、連絡先がない、連絡がつかないということが多々あります。
その場合、当該サイトのサーバ管理者(サービス提供元)へ削除依頼をします。
サーバ管理者は「プロバイダ責任制限法」に基づき、以下のケースにおいて、開設者(発信者)に対し責任を負うことなく削除が可能となっています。
プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト
http://www.isplaw.jp
損害賠償請求を行うためには、まず発信者の特定をしなければなりません。
「インターネットの特性」の項目で述べたように、原則的にインターネット上へ書き込んだ者の特定は可能です。しかし、実際に個人にて書き込んだ者を特定するには費用がかかることもあり、現実的にはハードルが高く、困難であることをあらかじめ認識しておく必要があります。
発信者の特定には下記の通り原則的に2回の開示請求を行うことになります。
IPアドレスとはインターネットに接続している端末を個別に識別するための符号を指し、インターネット上の住所にあたります。世界中で重複するものはなく、固定のIPアドレスも存在しますが、一般的には流動的であると認識してよいでしょう。
上記の通り、端末1台ごとに固有なIPアドレスが付与されているため、インターネット上に書き込んだ端末がどれであるかということが判明するわけです。
このIPアドレスの情報は書き込みが行われたサイトの運営者(サーバ管理者)などが把握しておりますので、該当するところへ開示請求を行います。
書き込みを行ったIPアドレスが特定できたら、次にそのIPアドレスを付与されていた端末の特定を行います。IPアドレスを把握しているサイト運営者でも、そのIPアドレスがどの端末に付与されているかまではわかりません。
インターネットに接続するにはアクセスプロバイダ(インターネット接続業者)と契約する必要があります。そしてユーザはアクセスプロバイダより付与されたIPアドレスにてインターネットへ接続することになります。
つまり、アクセスプロバイダは、どのIPアドレスがどの端末から書き込まれたものかを把握していることになります。したがって、発信者情報の開示請求はアクセスプロバイダへ行うことになります。
しかし、現実的にはそれほど簡単にいくものではありません。まず、発信者情報開示請求にて発信者の特定はできますが、それはあくまで、発信された端末の特定にすぎません。
インターネットカフェなど不特定多数の人が利用する端末から書き込まれた場合などは、実際に書き込んだ人まではわからず、民事ではそれ以上の調査が困難となります。
以上、2度の開示請求により発信者の特定は可能となっております。
実際に誹謗中傷事案にて警察が対応することはあまりないのが現実です。
憲法で保障されている「言論・表現の自由」や、書き込まれた内容の「公益性」の観点もあるため、殺害・爆破予告などの事件性がない場合、インターネット上の書き込みのみで警察が動くのは難しいという判断です。
したがって、一般的な誹謗中傷では、刑事ではなく、民事にて責任追及するのが通常のケースと考えた方がよいでしょう。
※内容によっては対応できる可能性もありますので、詳細については最寄りの警察署へご相談ください。
インターネットバンキング不正利用の被害は、ニュースなどで目にする機会も多いと思います。また、クレジットカード情報を不正に利用され、覚えのない買い物の代金を請求されてしまうトラブルも増えています。
このようなトラブルの場合、以下のような方法で、ネットバンキングやショッピングサイトに登録しているIDやパスワード、クレジットカード情報などを知られてしまっている可能性があります。
フィッシング詐欺とは、金融機関などを名乗るメールやショートメッセージを送って偽のウェブサイトへ誘導し、IDやパスワード、クレジットカード番号などを盗み取ろうとする行為です。
主に、以下のような会社やサービスを名乗ることが多いようです。
金融機関や各種サービス運営会社などが、IDやパスワードを尋ねることはありません。
届いたメールの内容がおかしいと感じたら、ブックマーク(お気に入り)や検索サイトから、正規の窓口を探して問い合わせてみてください。
(メールに書かれたURLや電話番号は利用しないでください。偽の窓口の可能性があります。)
また、金融機関などでは、不正利用を防止するために様々なセキュリティ対策が行われています。一度、利用しているサービスのウェブサイトを確認してみてください。
金融機関などの正規のサイトにアクセスした際に偽のログイン画面を表示し、普段は入力の必要がない情報(暗証カードの乱数表のすべての数字など)の入力を要求するマルウェアが存在します。
フィッシング詐欺とは違って偽の画面と気づきにくいため、被害が拡大しています。
下記「マルウェア(悪意のあるプログラム)」でご案内している対策を行い、マルウェアに感染しないように注意しましょう。また、これまで入力したことのない情報の入力を要求された場合は、特に注意が必要です。
不安を感じた場合は、各サービスの問い合わせ窓口へ相談されることをおすすめします。
できるだけ早く、パスワード変更手続きを行ってください。
もし、不正利用者が先にパスワードを変更してしまい、サービスにログインできなくなっている場合は、各サービスのサポート窓口へ連絡してください。
クレジットカード番号やオンラインバンキングの乱数表などを入力してしまった場合は、速やかにカード会社や金融機関の正規窓口へ連絡してください。
リンクやボタンをクリック(タップ)しただけで、「登録が完了しました」などの文言とともに、利用料金を請求されるトラブルです。
最近ではパソコンだけではなく、スマートフォンのユーザにも被害が拡大しています。
手口は年々巧妙になり、芸能情報サイトや動画投稿サイトなど、従来のアダルトサイト以外のジャンルから誘導されるケースも増えていますので、注意が必要です。
「登録が完了しました」などと表示されても、あなたが登録に同意していなければ契約は成立しません。契約が成立していない場合は、料金を請求されても支払う必要はありません。
料金を請求する画面が表示されても、メールや電話で相手に連絡を取ったり、あわてて料金を支払ったりしないようにしてください。
ただし、規約への同意を求める「はい」や「同意する」などをクリックしていた場合は、不正な請求と判断されないこともありますので、内容を確認せず同意しないよう注意しましょう。
不安な場合は、最寄りの消費生活センターや警察などに相談しましょう。
請求画面を表示するソフトウェアが、パソコンにインストールされている可能性があります。
その場合、該当するソフトウェアをアンインストールしてみてください。
解決できない場合は、システムの復元 やパソコンの初期化(リカバリ)をおすすめします。
ブラウザのタブを閉じたあと、履歴やCookieを消去すると消せる可能性があります。
また、原因と思われるアプリに心当たりがある場合は、該当するアプリを削除してみてください。
原則的に“無視”してください。
慌てず、騒がず、同意せず。
何もしないで画面をそっと閉じることが最適な対処方法となります。
ウイルス対策ソフトと言われるように、一般的に「パソコンに悪さをするプログラム=ウイルス」という認識がありますが、このような悪意のあるプログラムは総称して「マルウェア」と呼びます(広義的な意味としてマルウェアを「コンピュータウイルス(ウイルス)」と呼ぶこともあります)。
最近では一般的なニュースなどでも言及されるので、簡単にマルウェアの主な種類について説明いたします。
自立するプログラムではなく、既存のプログラムを改ざんして寄生し、自己増殖を行いながら、他のファイルやパソコンなどへ感染します。
自己増殖する点はウイルスと同じですが、独立したプログラムでネットワークを介して感染先を探しにいくので、非常に感染力が強く、最も感染数の多いマルウェアです。
ウイルスやワームと違い感染者本人がプログラムを実行しなければならず、一見無害なダウンロード・ファイルなどにプログラムが隠されているので、ユーザが認識しないまま侵入し、遠隔操作などを行われてしまいます。自己増殖しない点もウイルスやワームと違います。
偽のウイルス感染などの警告を行い、ユーザの恐怖心をあおって、金銭の要求や個人情報の取得、不正プログラムのダウンロードなどの被害をもたらします。人間の心理も利用したマルウェアです。
ユーザの気づかないうちにパソコン内に侵入し、閲覧状況や個人情報などを収集します。一部マーケティングに利用するサービスもありますが、悪質なものとしては、しつこく広告を表示させるアドウェアもスパイウェアの1つとされています。
感染するとHDD(ハードディスクドライブ)やファイルが暗号化されるなどの制限が加えられ、その制限を解除するために身代金を要求されます。このようにして収益になることから近年、その手法は巧妙化しており、被害が増加しています。
上記の通りマルウェアと言っても様々な種類がありますが、どれもユーザに被害をもたらす悪意のあるプログラムということに変わりはありません。
企業などの正規のウェブサイトが改ざんされ、マルウェアをダウンロードさせるスクリプト(プログラム)が不正に挿入されてしまうことがあります。セキュリティ対策が不十分な場合、改ざんされたサイトを閲覧するだけでマルウェアに感染してしまいます。
このトラブルには、次でご案内する「ソフトウェアの脆弱性」が利用されています。
脆弱性とは、セキュリティ上の欠陥のことです。「ウェブサイトの閲覧」でご案内したように、脆弱性を悪用して侵入するマルウェアも多く見られます。
WindowsやAdobe Flash Player、Adobe Readerなどの脆弱性は、ニュースなどで目にする機会もあるかと思いますが、これ以外のソフトウェアの脆弱性が悪用されてしまった例も少なくありません。
脆弱性は、修正プログラムをインストールすることで解消できます。
信頼性の低いサイトからダウンロードしたソフトウェアをインストールすると、マルウェアも一緒にインストールされてしまうことがあります。
マルウェアがインストールされやすいように、最初から「はい」や「同意する」などにチェックが入っていることもあるようです。
特定のパソコンがマルウェアに感染した場合、同じネットワーク上にあるパソコンにも次々に感染が拡大してしまうことがあります。主に企業などの組織で起こりやすいトラブルです。
ファイル共有ソフト(Winny、Share、BitTorrentなど)でやり取りするファイルの中に、マルウェアが含まれていることもあります。
メールに添付された悪意のあるプログラムを実行してしまうと、マルウェアに感染します。また、HTML形式のメールにマルウェアを読み込ませるスクリプトが挿入されている場合、メールを開いただけでマルウェアに感染してしまいます。
ソフトウェアに自動更新機能がある場合は有効にすることをおすすめします。よくわからない場合は、ソフトウェアの提供元に確認してください。
前出のWindows、Adobe Flash Player、Adobe Readerにはすべて自動更新機能があります。
自動更新機能がないソフトウェアの場合は、ソフトウェア提供元からの情報をこまめに確認してください。
「感染経路」でご案内したように、マルウェアの感染経路は多岐にわたりますので、ウイルス対策ソフトなしの無防備な状態でインターネットに接続するのは非常に危険です。
また、ウイルス対策ソフトの契約期間が切れると、ウイルス定義ファイルを最新の状態に更新できなくなりますのでご注意ください。
ソフトウェアは信頼性の高いサイトからダウンロードするようにしましょう。
「はい」や「同意する」をクリックする際は、表示された内容をよく確認してください。
もしマルウェアに感染してしまった場合、ウイルス対策ソフトでマルウェアを駆除したり、「システムの復元」機能で感染前の状態に戻したりすることもできますが、不安な場合はパソコンの初期化(リカバリ)をおすすめします。初期化することで、パソコンを購入時の状態に戻すことができます。詳しい操作方法は、パソコンメーカーへお問い合わせください。
なお、パソコンを初期化すると、保存しているデータはすべて消えてしまいますので、初期化する前に大切なデータをUSBメモリや外付けHDDなどへバックアップしておくとよいでしょう。
インターネットを通じて気軽に情報を発信できる今では、誰でも当事者になるかもしれない、身近なトラブルです。
例えば、以下のようなケースは著作権侵害に該当します。
など
著作権侵害は、ごく一部の例外を除いて親告罪であり、著作権者本人が訴えなければ著作権を侵害した相手を罰することはできません。また、プロバイダやブログサービス運営会社などで対処を行う際にも、著作権者本人からの連絡かどうかを確認するようになっています(プロバイダ責任制限法 著作権関係ガイドライン IV1)。
以下は、自分の著作権が侵害された場合の対処例です。
状況に応じて、どう対処するのが良いか判断してください。
など
など、他人の著作権を侵害する行為を見つけた場合は、まず著作権者本人に連絡してください。
1番目の例ならブログを書いた友だちに、2番目の例ならイラストの作者に問い合わせると良いでしょう。
「自分の著作権を侵害されたら」でご案内したとおり、著作権侵害への対応は、原則として著作権者本人が判断する必要があります。著作権者以外の人が、善意で警察やブログサービス運営会社などに連絡したとしても、対処は行われません。
著作権侵害は刑事罰の対象です。懲役刑または罰金刑、もしくはその両方が科せられることがあります。また、損害賠償請求を受けるなど、民事上の責任を問われることもあります。
もし、刑事上または民事上の責任を問われることがなかったとしても、周囲からの信頼は失われてしまうでしょう。
他人の著作物を利用する際は、事前に著作権者の許可を取ってください。いわゆる「著作権フリー」の素材を利用する場合でも、配布元の利用条件を必ず確認してください。
例外的に、保護期間内の著作物を自由に利用できる場合もありますが、条件が厳しく定められています。
<文化庁 著作物が自由に使える場合>
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
著作権の保護期間が切れた著作物であれば、自由に利用することができます。日本の場合、保護期間は原則50年です。
<文化庁 著作者の権利の発生及び保護期間について>
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/hogokikan.html